“ひも“とは、
他人にお金を頼り自分は働かずに楽して暮らすホモサピエンス…のことではありません!
この世のあらゆる物質は”ひも”(弦)からできているという理論が「超ひも理論」です。
・あくまで理論上の話であり実証はされていない
・物質の最小単位は粒子(球)ではなく”ひも”(弦)と考える
・重力も”ひも”によって伝わる
・この世界は9次元空間である
・宇宙のすべてを説明できる
SFみたいな話ですが「超ひも理論」は現代物理学の最先端で議論されています。
自然界をシンプルに説明できる”究極の理論”の最有力候補です。
大学で宇宙の研究をしていたこぉ♂がお届けするNewtonの超ひも理論!お楽しみに♪
Newton自体読みやすいけど更にコンパクトにまとめちゃいました
Newton科学雑誌をベースとしているので情報の信頼性は折り紙付き
記事にはこぉ♂の所感も含まれます
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超ひも理論の源「弦理論」
超ひも理論は「弦理論」という元となる理論があります。
1960年代、当時「ハドロン」とよばれる粒子がたくさん発見されました。
ハドロンは素粒子だと考えられていましたが「え、なんか素粒子多すぎん?」という疑問が多くあがっていました。
それ以上分割できない自然界の最小単位となる粒子です。
現在の物理学では「すべての物質は点(粒子)の集まり」と考えます。
椅子、TV、人間…すべからく粒子から成っています。
素粒子は最小単位のため自然界にそこまで多く存在するはずがないのです。
そこで、すべてのハドロンは「ひも(弦)」からできており、その振動などの違いによって異なる粒子にみえると考えられました。
これが「弦理論」です。
その後、ハドロンは素粒子ではないとわかり弦理論は下火になりました。
しかし「すべての素粒子は1つのひもからできている!」というアイデアは研究され続けてきました。
1980年代。
弦理論が「超ひも理論」として生まれ変わり物理学の最前線に躍りでました。
SFのような話にも聞こえる「超ひも理論」ですが、なんと約80年も前から研究され続けている理論なのです。
点粒子の限界 ~素粒子が”点”だと重力理論が破綻する~
理論系の話は過程が長くなりがちなので結果だけお伝えします。
重力にはまだ解明されていないことが多く、
現在の素粒子物理学で重力について説明しようとすると理論が破綻することがわかっています。
一方、素粒子の正体が”ひも“だとする超ひも理論では重力理論を説明することが可能です。
これが素粒子を点ではなく”ひも”だと考えることの大きなメリットの1つです。
物質を作る素粒子 ~すべての素粒子をひもの振動で説明できる!?~
素粒子(電子など)には計17種類+まだ発見されていない素粒子もあると言われています。
超ひも理論ではこれら全ての素粒子は”ひもの振動“の仕方で説明できるといいます。
バイオリンが1本の弦からさまざまな音を出せる原理と似ています。
ひもはきわめて小さく、その長さは10の-35乗メートルほどです。
力を伝える素粒子 ~すべての力の伝達をひもで説明できる!?~
自然界には4つの力が存在します。
②重力
③強い力
④弱い力
強い力と弱い力って相変わらず適当なネーミングですよね…。
この2つはとてもミクロ(原子的)な世界で発生する力なので身近に感じることはできません。
例えば、野球のバットでボールを打つ時は電磁気力(光子)が働きます。
これら4つ力も素粒子によって伝わると考えられていますが、仮にすべて”ひも“から生じるという枠組みが確率すれば、これまでは別々のものとして扱ってきた4つの事象(力)を超ひも理論という1つの原理で説明できることになります。
上記からも超ひも理論は「究極の理論」の最有力候補とよばれるのです。
超対称性 ~超ひも理論たらしめるもの~
✔ 物質を作る素粒子(電子など)
✔ 力を伝える素粒子(光子など)
実は弦理論では「力を伝える素粒子」しか扱うことができませんでした。
そこで「物質を作る素粒子」も扱える理論にするために導入されたのが「超対称性」です。
超ひも理論とは「超対称性」を導入した弦理論という意味なのです。
「物質を作る素粒子」と「力を伝える素粒子」は決まったパートナーが存在するという考え方
いわば…人はみな生まれた瞬間に結婚相手が決まっているというイメージです。(こぉ♂の拡大解釈)
超対称性はあくまで理論上の話です。
結婚相手も最初から決まってないのでちゃんと自分で探しましょう!
量子重力理論 ~超ひも理論で宇宙のすべてを説明できる!?~
物理学は「自然界をシンプルな法則で説明したい」というゴールを目指しています。
これはとても重要なことで、
あえて言い換えると
「宇宙はシンプルである」
ともいえます。
一見複雑に見える宇宙ですが、実はとてもシンプルな世界であるといいます。
やっぱり宇宙ってロマンですね。
話を戻すと。
現代の物理学の柱は以下の理論で支えられています。
ミクロな世界:量子力学
重力はマクロな世界です。
重力を量子力学で考えると理論に破綻がおきてしまいます。
自然界のあらゆる物事を説明できる”究極の理論”をうちたてるには至っていないのが現状です。
超ひも理論は量子力学にもとづいて重力をあつかえる「量子重力理論」とも言われます。
宇宙ではミクロな領域に大きな質量が存在する状況もあります。
量子重力理論(超ひも理論)であればそんな状況も説明することができます。
超ひも理論が完成すれば
「宇宙のはじまり・宇宙の終わり」についても知ることができるかもしれません。
宇宙には正体不明の物質「ダークマター」が存在します。
ダークマターは質量があるのに目には見えない謎物質です。
1つ前で出てきた「超対称性粒子」はダークマターではないかという指摘もあります。
このように超ひも理論には大きな可能性を秘めています。
超ひも理論は謎に包まれる宇宙のすべてを説明できるのではないかともいわれており、
これが自然界における”究極の理論“と呼ばれる理由です。
ブレーンワールド仮説 ~世界は9次元だった!?~
超ひも理論は現代理論の課題を解決しつつ驚くべき予言をします。
「世界は9次元である」
空間は縦・横・高さの3次元です。
超ひも理論では更に次元が6つもあるというのです。
思考がパニックですね。笑
9次元である理由は簡単です。
量子力学と相対性理論が両立するためには9次元空間が必要だからです。
思考がパニックですね?(2回目)
つまり超頭の良い人たちが計算した結果、超ひも理論では9次元空間だと自然に決まった ということです。
結果だけ覚えておけばOKです。
しかし、感覚的に空間は明らかに3次元です。
そこでこの矛盾を解決するための仮設の1つが「ブレーンワールド仮説」です。
9次元空間からみれば私たちの宇宙である3次元空間は”膜“(ブレーン)のようなものであり、この膜に固定されている”ひも“の振舞いが様々な物理現象に対応するという仮説です。
ブレーンワールド仮説には「なぜか重力が圧倒的に弱い」という疑問を解決することも可能です。
磁石は机のクリップをくっつけ持ち上げることができます。
地球という巨大な天体がおよぼす重力よりも小さな磁石がおよぼす磁力の方がはるかに強いというわけです。
ブレーンワールド仮説では重力はひもを通じて”膜”を飛び出すことができます。
あくまで私たちの世界は膜内になるため、膜を飛び出した重力は観測できず圧倒的に弱いようにみえるというわけです。
余剰次元のコンパクト化 ~余った6次元は3次元に丸まっている!?~
ブレーンワールド仮説以外にも高次元空間を説明するアイディアはあります。
4次元上の余った空間である「余剰次元」は小さく丸まってコンパクト化されているという仮説です。
例えば、綱渡りする人間は前後方向にしか動けません。
この人によって綱は1次元です。
では綱の上にいるアリにとってはどうでしょうか。
小さなアリは前後方向に加えて綱をくるっと回ること(円周方向)も可能です
アリにとっては綱は2次元なのです。
この例でいう円周方向が人にとっての「コンパクト化された次元」です。
我々が3次元空間しか認識できないのは他次元は小さく丸まっているためということです。
ただし何故大きな3次元と小さな6次元に分かれているかという疑問は残っていたりと研究は続けられています。
超ひも理論のQ&A
超ひも理論は宇宙のすべてを解き明かす理論だと期待される一方で、実験による検証などは進んでおらずまだまだ未完成な部分もあります。
今後、超ひも理論の研究はどうなっていくのか。
そして”究極の理論”がえがきだす宇宙の真実とはどのようなものか。
最後にQ&Aを紹介して終わります。
ひもの存在を実験で確かめる方法はある?
今のところなし。
ひものようなミクロな物質は加速器で粒子と粒子をぶつけて発見するという実験が有効だが、ある試算ではひもをみるための加速器には、太陽系ほどの大きさが必要とされている。
現在の超ひも理論ではどこが未完成?
最大の弱点は「検証できない」こと。
ただし超ひも理論が量子重力理論を含んでいるのは確実で、何らかの形で現実世界に対応しているにちがいないと考える研究者も多い。
超ひも理論は宇宙のはじまりを説明できる?
説明できる。
宇宙のはじまりは極めて小さいスケールで極めて強い重力(エネルギー)が必要となり、量子重力理論が必要になる状況そのもの。
超ひも理論はノーベル賞をとれる?
まだとれない。
超ひも理論はまだ検証ができる段階ではなくあくまで机上の空論。
ただし2021.3にブラックホールのとある現象ついて超ひも理論を用いて計算した実績もできてきている。
超ひも理論が完成したら物理学の研究は終わり?
むしろはじまり。
理論の完成と、理論が予測する現象を研究するのは別のこと。
物理学は「自然現象を理解する」ための学問。
超ひも理論が完成した後は「超ひも理論による現象論」という分野が大いに花開くと思われる。
エピローグ【Newton2022.1】超ひも理論 ~究極の理論はどこまでできあがっているか?~
超ひも理論の魅力、伝わりましたでしょうか?
個人的には超ひも理論が証明されれば「世界は9次元空間である」という予言に胸熱ですね!
時間を1次元と考えると9次元空間+1次元で「10次元」になります。
4次元ポケットの非ではありませんね。笑
人間が認識できる世界はとても狭いです。
たまには超ひも理論のような宇宙のロマンを学ぶことで思考の視野を広げてみてもいいのではないでしょうか🍏